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太陽光に頼る途上国、フィリピンの事例

ビュー:30004/07/2017  

太陽光発電(太陽光)は、立地に依存するものの、石炭火力を含む火力発電より安価になった。

太陽光の発展は、途上国に強い影響を与えている。途上国では電力系統の信頼性が十分高くない中、電力需要が伸び続けている。このような状況で発電能力を高めようとすると、石炭火力だけでは対応できない。分散型電源を充実する必要がある。

例えばフィリピンだ。まさに大規模導入の入り口に差し掛かっている(図1)。

図1 フィリピンのメガソーラーの一例 ドイツCONERGYが2015年、パンパンガ州(ルソン島)に建設した出力10MWの太陽光発電所。遠景に見えるのはアラヤット山(標高1026m) 出典:ドイツCONERGY

2017年3月18日、フィリピン政府エネルギー省(DoE)は、同国北部のルソン島で出力150MWのメガソーラーの建設が始まったと発表した。フィリピンSolar Power Philippinesが、マニラから北北西の方向に約90km離れたタルラック州コンセプシオンに建造。2017年末までに立ち上げる。

特徴はフィリピン国内で製造された太陽電池モジュールを利用すること。30万世帯に電力を供給する計画だという。

DoEで長官を務めるAlfonso Cusi氏はシャベルを手にして着工式へ参加。発表資料の中で、プロジェクトについて次のように述べている。「わが国の電力需要は(ピーク時に)1万3000MWだが、供給は1万4000MWであり、余力が少ない。太陽光は電力需要が急上昇する昼間に役立つ。DoEは特定の発電技術を推奨していないが、太陽光にはわが国の電力の25%を供給する潜在能力がある。さらに今回の太陽光発電所は蓄電池*1)を併設しており、わが国のような島しょ国家に最適だ」。

同氏によれば、フィリピンにおいて発電量に占める再生可能エネルギーのシェアは32%に達しており、これは東南アジア地域で最も高いのだという。

2016年末の導入量は900MW

コンセプシオンの事例がどれほど巨大なのかは統計資料を参照すると分かりやすい。

DoEが2017年3月22日に公開した、2016年末までに導入済みの再生可能エネルギーに関するデータによればこうだ。2016年末の太陽光の累積導入量は903MWに。コンセプシオンの事例は累積導入量の4分の1に相当する(図2)。

図2 フィリピンにおける再生可能エネルギーを用いた発電設備の累積導入量 2016年末時点の出力(MW)を示した 出典:DoEの発表資料に基づき本誌が作成

今後も太陽光のプロジェクトがめじろ押しだ。現在201のプロジェクトが発表されており、合計容量は2131.8MWに達する*2)。同国の再生可能エネルギー法*3)では、プレジェクトが実際に建設に入る前に認可を受ける必要がある。

DoEは2017年2月28日時点で、3月以降に建設が認められた太陽光を含む全発電プロジェクトを公開している。合計出力は5085.625MW。

図3 フィリピンの3地域 北からルソン、ビサヤ、ミンダナオ 出典:米海洋大気庁(NOAA)が公開した画像を基に本誌が作図

フィリピンの国旗には黄色い星印が3つある。これは国を代表する北部のルソン島、中部のビサヤ諸島、南部のミンダナオ島を意味する(図3)。このため、エネルギー関連のプロジェクトも3つの地域ごとにまとまっている。

ルソン島は最も面積が大きく、人口も5000万人に達する。ミンダナオ島は2番目に大きな島である。人口は2000万人。このため、認可された発電所に占める石炭火力の出力比率が高い。それぞれ77%、86%だ。

中部のビサヤ地域は3番目に大きなネグロス島、8番目のレイテ島、9番目のセブ島といった中小規模の島々からなる。つまり分散型電源が適する。石炭火力の比率は48.3%といくぶん低く、太陽光が23.5%(65.67MW)を占める。

日本とは違う道を歩んだフィリピン

フィリピンの国土は日本といくぶん似ている。面積は30.0万平方キロメートル(日本の79%)、人口は1億200万人(同81%)。どちらの国も約7000の島々からなり、火山活動が活発だ。

フィリピンは一次エネルギーの約3割を石油に頼っており、ほぼ全量を輸入に頼る。このため石油依存度を下げ、エネルギーの多様化に早くから取り組んできた*4)。発電について多様化の柱は、これまで地熱と水力だった*5)。地熱の設備容量(2015年末時点で1.9GW)は米国についで世界第2位である。

図4に2014年における発電量を示した。総発電量773億キロワット時(77262GWh)に占める石油の比率は7%と低くなっている。石炭についで再生可能エネルギーが2位(26%)に付けた。水力と地熱の比率は約9:10である。

DoEのCusi氏は再生可能エネルギーを用いた発電量が32%であると述べていることから、約2年で6ポイントも同エネルギーが増えた計算になる。

図4 フィリピンにおける方式別の発電量(2014年) 出典:国際エネルギー機関(IEA)。

図4にはバイオマスや廃棄物、太陽光、風力も描かれている。しかし、2014年当時は量が少なく、見分けることが難しい。

フィリピンの電化率は2013年時点で80%。約2100万人の国民が系統電力から切り離されたままだ。

フィリピン政府は2020年までに再生可能エネルギーを用いた電力の比率を40%まで高めようとしている。太陽光などの再生可能エネルギーに支えられて、電化率も高まっていくだろう。

*1) 導入する蓄電池の出力・容量は未公表。なお、ルソン島に位置するサンバレス州マジンロックには米AES Energy Storageが出力10MWの蓄電池を導入し、2017年12月から運転を開始することが決まっている。

*2) 他の再生可能エネルギーを合計すると、320のプロジェクト、3987.72MWに達する。太陽光に次ぐのが水力(88プロジェクト、1484.02MW)、風力(22プロジェクト、260MW)だ。
*3) フィリピンは中央政府ではなく、州政府ごとに固定価格買取制度(FIT)を導入している。導入第1号は日本よりも早い2008年だ。FITの他にRPS法やネットメータリング法も導入している。2014年から2030年の期間でエネルギー原単位(関連記事)を40%引き下げる政策や液体バイオマスを用いた交通政策も打ち出している。

*4) 原子力発電に対しては否定的だ。日本と同じ1955年に、米国とフィリピンは原子力協定を結び、研究開発を開始した。しかし、1985年にほぼ完成した原子力発電所(出力62万キロワット)は政府による運転認可が得られなかった。1995年から再導入を試みるも、2011年3月に起きた日本の原子力発電所事故を受けて、開発を断念した。
*5) 日本の発電量は1兆400億キロワット時であり、フィリピンの13倍以上。日本は地熱資源に恵まれているにもかかわらず地熱発電の設備容量はフィリピンの約4分の1(0.5GW)にすぎない。2014年度における電源比率は石油10.6%、石炭31.0%、天然ガス46.2%、水力9%、その他の再生可能ネルギー(地熱・新エネ)3.2%だった。



【修正履歴】 記事の掲載当初、本文p.2の第3段落で「石炭、天然ガスについで再生可能エネルギーが3位(26%)に付けた」としておりましたが、これは「石炭についで再生可能エネルギーが2位(26%)に付けた」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです(2017年3月27日)。

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